ゲオ先行レンタルでリリースされた、「アナベル 死霊館の人形」のジョン・R・レオネッティ監督によるホラーです。
若き母親であるレイチェルの元にある日、母から送られてきた荷物の中に古い子守唄の本を見つける。泣き止まない我が子に悩んでいたレイチェルは、その子守唄を歌う事で寝かしつけに成功する。しかし、その日からレイチェルや夫ジョンの周りで次々と不可解な現象が起こり始める…というストーリーになっています。
育児ノイローゼとホラーを合わせた作品ですね。ずーっと鳴き続ける赤ん坊に悩まされる主人公の若い母親レイチェルが、母から送られてきた荷物にあった古い子守唄の本にあった子守唄を歌ったことから、悪霊に赤ちゃんを狙われることになります。
前半、四六時中泣き続ける赤ちゃんに悩まされるレイチェルの描写が意外とアッサリしたものでしたね。育児ノイローゼホラーはノイローゼになって追い詰められる描写じっくり描くことで、本当に怪異が出ているのかノイローゼによる幻覚なのか分からなくさせるものですが、今作はそこに重点は置いてない感じですね。
子守唄を歌って赤ちゃんがぐっすり眠って夫婦の時間も増えていい事ばかりだったのが、不気味な老婆の幻覚を見始めるようになります。ベビーモニターに映ったり、ジョンがシャワー浴びてる時にレイチェルが入って来て振り向いたら老婆の姿に見えたり、ベビーモニターを買いに行った売り場で現れたりしますが、そんな派手なシーンやジャンプスケアはなく、恐怖描写も地味な物ですね。クローゼットの服の隙間から老婆が顔覗かせてるシーンはちょっと怖かったかな。
冒頭で赤ん坊を攫われ、夫も殺されてベビーベッドに赤ん坊の死体残されたことで精神病院に入れられたレイチェルの姉ビビアンやユダヤ教のラビに話を聞いて、悪霊の正体に迫っていく展開も目新しさはないけど面白いとは思いました。
悪霊リリスはアダムの最初の妻であり、アダムにフラれて狼と交わり半人半獣の異形の子供を産み、完成された子供を持つアダムとイヴに嫉妬して人間の子供を攫うようになったという設定ですが、実際伝わってる伝説も概ね同じ内容みたいですね。終盤鏡の世界で現れるリリスは美人だけど伊藤潤二の漫画に出てくる渕さんみたいな感じもあってそこは不気味で良かったですね。リリスの子供？のシャム双生児みたいに二人の赤ん坊がくっついた怪物や獣人みたいな赤ん坊はCGですが妙に気持ち悪さあったな。
大抵この手のホラーでは父親はノイローゼだと取り合わずに蚊帳の外で、手遅れになって真実に気付くものですが、本作では異変が起きた最初の方から子守唄の本に原因があると考えて、ラビに相談に行ったりと子供と妻のために頑張ってて好印象。終盤でもラビから貰った呪文唱えて老婆撃退したりと活躍してましたね。
病院から主人公が連れだしたビビアンが協力すると見せかけて、主人公の息子を身代わりに自分の息子を取り戻そうと画策してたりと、いいアクセントになってたと思います。
主人公が引きずり込まれるリリスの住処である鏡の中の世界はダークファンタジーっぽい雰囲気も漂ってて良かったですね。赤ん坊の死体で地面が覆いつくされてたり、白いカーテンで覆われたベビーベッドが並んだ場所、赤ん坊のいる各家庭に繋がる鏡が両側にかけられた廊下といったシュチエーションもいい感じでした。あの子守唄の内容からすると、リリスとしては連れてきた子供をあそこで守ってるつもりなのかな。
息子を取り戻して一安心、と思わせてからのラストも意地が悪くて好きですね。ビビアンは自己犠牲になったけど、ちゃっかり自分の目的は達成してたんだな。
ラストは取り戻した本を使って主人公達が今度はビビアンのようになるのかな。
怖さはそれほどでもないライトなホラーではありますが、軽く見るには充分ではないでしょうか。
