前作の「イーダ」がとても印象深かったポーランドの監督。
ポーランドはドイツの後にソ連にも侵攻されたことで戦争の被害者も多く、戦後も複雑な道を辿っている。
これはソ連の影響下でポーランドが共産主義政権だった頃、ある民族歌舞団のピアニストと歌手として出会った男と女の長い愛の話。
モノクロだからこそ美しく光る映像と、様々な音楽が魅力的だった。
政治家が芸術に口出しすると碌な事が無い訳で、ソ連からの圧力で♪立派なお方スターリン♪♪なんてプロパガンダに利用される事にうんざりしたピアニストは亡命。
しかし彼女は歌舞団に残る。
パリ、ベルリン、ユーゴスラビアと歌舞団のヨーロッパ興業の度にそこで逢瀬を重ねるふたり。
ポーランドの歴史の様に確かに時代に翻弄された恋人たちではあるけど、彼女が主導権を握ったように見えるあのラストが…。
何故彼女はポーランドへ帰ったのか？
歌手として成功しても、パリには彼女の心を満たすものがなかったのだろう。
彼女が求めていたものは、ふたりが出会ったあの頃の自分自身だったのかも。
…両親に捧げる…
別れと出逢いを繰り返した監督のご両親を一部モデルにしたそうで、そう聞くと厳しい時代の中を生き抜いたご両親、特に個性の強かったであろうお母さんへの想いが込められた作品の様に思える。
